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漆の不思議(硬化編)“漆かき”

 

漆をかきつける漆コラム “漆かき”
=漆の不思議(硬化編)=

漆の不思議
  ■ もくじ ■

=コラムトップ=

=漆の不思議(硬化編)=

=漆は弱いのか=

=椀と椀=

=漆は皮革のように=

=漆の不思議(硬化編)=

「漆」はご存知の通り、“漆の木の樹液”を活用した品を指しますが、
この“漆の樹液”には、皆様の知らない不思議が沢山含まれています。


我々との接点を振り返りますと、
石器時代にまで遡ることができます。
当時の利用方法は「 接着剤 」、後に、現在の漆器同様、
食器や装飾品、インテリアなどに活用されるようになりました。

では、なぜ、数多い樹木の中で、これ程までに漆の木の樹液が
重宝され、現代にまで脈々と活用をされて来たのでしょうか?

“漆の不思議”の最大のポイントは、自然が作り出した最強の接着力、
そして、それを実現する特殊な乾燥方法にございます。

表面に塗布した漆が“乾く”と、我々プロも表現していますし、
多くの皆様が“漆が乾く”という表現に違和感を覚えないと思います。

しかしながら、厳密に表現すると、表題の通り、漆は
“硬化”するのであり、これが最大の特徴であり、何千年と
代替のない天然塗料・接着剤として重宝されてきた背景となります。

自然由来であれ、化学塗料であれ、一般的には、
含有する水分やアルコールなどが蒸発や揮発することにより、
表面に密着(=乾燥)するものが大半だと思います。

しかしながら、漆の乾燥(硬化)は「 酵素反応(化学反応)」により、
乾燥(硬化)が進みます。

もう少しだけ細かい話をしますと、漆の樹液に含まれる
“ウルシオール”“ラッカーゼ”という2種類の特殊な成分が
活躍をします。

これらが、空気中の水分と結びつくことにより
複雑なメカニズムの酵素反応を起こし、
非常に強固な皮膜(漆膜)を形成するのです。

(この酵素反応は非常に強力で、縄文時代の漆膜が残るほどの
耐久性を持ちます。)

水分と酵素反応し硬化する訳ですから、
他の塗料に比べ、非常に高い耐水性を持つことも、頷けます。

もちろん、これらのプロセスが解明されたのは最近の話ですが、
石器時代に遡る人々が、自然の作り出した恵みに気づき、
そして活用してきたことに、驚きと敬意を感じます。(2006/6/30)


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