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■ もくじ ■
=コラムトップ=
=漆の不思議(硬化編)=
=漆は弱いのか=
=椀と椀=
=漆は皮革のように=
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=漆は弱いのか?=
漆は傷つきやすい(=お手入れが大変そう)というイメージで、
日々のご利用を敬遠される方という話をよく聞きます。
果たして、本当に漆は弱い(=傷つきやすい)のでしょうか?
“コラム1=漆の不思議=”でもご紹介の通り、
漆は現在においても最強の接着剤の一つであり、つまり、
相当レベルに強固な、かつ自然の塗料であることを
ご説明しましたし、証明もされています。
耐水性・耐アルカリ性・耐酸性に優れていることから、
一般的なご家庭の使用で漆が負けることもございません。
しかし、“漆は弱い”というイメージがあることも事実です。
漆の大半が、食器として存在していますので、
その比較対象となる陶器・磁器との相対的な感想なのだと思います。
通常、漆器は表面を磨きますし、磨かない技法にしても、
磨いたかのような均一の皮膜(漆膜)を表現するように
心がけた品が大半になります。
こうしますと、
どうしても表面の擦り傷が目立ってしまう欠点がございます。
そういった意味では、デリケートな一面を持つことは事実ですし、
陶磁器類に比べますと明らかに擦り傷は目立ちやすい素材と言えます。
しかしながら、“弱さ”を『 割れる・欠ける 』
という判断基準で見るとどうでしょうか?
この判断基準で比べれば、
陶磁器類の破損のしやすさを考えれば、漆器は遥かに有利です。
別に、陶磁器類と耐久性勝負を挑んでいる訳ではありませんが、
漆器は、その魅力が過小評価されがちだったり、あるいは、
魅力が正しく理解をして頂けなかったりが往々にしてございますので、
漆器屋のボヤキ半分に、違う価値観を提案してみました。
現実に、私自身の経験ですが、
ものごころついた幼少期から一人暮らしを始めるまでの
15~20年ぐらいに渡り、一つのめし椀を使い続けました。
最後の最後は、無数の擦り傷で、擦り傷かどうかも
分からないほどの使い込み具合でしたし、また、それにより
大変に愛着を覚えていたことを思い出します。
プラスチック製ならまだしも、他の素材では、
毎日使いながら15年も20年も持つ素材は
なかなか無いのではないかと・・・思っています。
話が多少わき道に逸れてしまいましたが、
漆器の割れにくさ・欠けにくさ は、洗う時などは気が楽で、
優れた一面も持っています。
どんなアイテムでも、得手不得手があると思いますが、
“漆器の得手”はなかなか伝わらないので、
このようなテーマで書いてみました。(2006/6/30)
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