さて、若宮氏の木地へのこだわりは、
一つだけでは終わりません。
実は、この棗には棗の親と蓋に共木を
用いております。共木とは、
親と蓋を同じ一本の木からとること。
従来、これほどまでこだわって、
材料を指定することは、本当に稀なの
ですが、今回はその軽さ、薄さに
こだわるために生じる、木のゆがみを
最小限に抑えるために、共木という
こだわりが選択されました。
また、珍しいこだわりは、
“木地がゆがまないために型も
制作していること”。
同じ材質の欅で蓋と親を製作する
だけではなく、ゆがみを防ぐために
はめる型にも同じ欅を使用して
います。
蓋、蓋の型、親、親の型…と、
一つの作品を製作するために4つの
材料を必要とするこの技法は、
若宮氏のふるさとでもあり、高級漆器
の名産地、輪島でもめったに
用いられることのない贅沢な
技法の一つなのだそうです。
若宮氏のこだわりは、
木地という漆器の漆までたどり
着いていない、この段階で、
彼に4年の歳月を投下させていました。
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